[Kyber Netwok] Kyber 3.0: プロトコル再構築, Dynamic MM, KNC マイグレーション
昨年、DeFiは凄まじいスピードで変化を続けてきました。そしてキー・アーキテクチャの束縛と課題を乗り越えるために改善が続いています。昨年10月のブログもぜひご覧ください。
今回の投稿では、今後の成長のために、いかにプロトコルが縛られた過去の制限(例: ガス消費、流動性提供に許可が必要なモデル)を除去するのかを説明します。Kyberが流動性提供者、ユーザー、開発者、KNC保有者へのインセンティブを提示しつつ、DeFiトレンドに適応して将来的イノベーションを促進するための進化です。
Kyber 3.0への船出です。Kyberは単一プロトコルから、異なるDeFiユースケースに応えるための、目的別の流動性プロトコルのハブへと進化します。Kyberのアーキテクチャとトークンモデルに対しては最も大きな変更であり、2つのフェーズに分けて行われます。 Katana フェーズと Kaizen フェーズです。
次に、全く新しい流動性プロトコル、Kyber DMM(Dynamic Market Maker)をローンチします。Kyber DMMでは、流動性提供は誰でも完全にパーミッションレスに可能であり、誰もがテイカーになることができます(Dapp, アグリゲーター、エンドユーザー等)。
また、新アーキテクチャを支えてネットワーク価値を高めるため、KyberDAOとKNCを新たなコントラクトにアップグレードさせる提案について投票が行われます。KNCトークンのガバナンス力とユーティリティ性を高め、流動性のイノベーションを起こすためです。
Kyber NetworkはDeFiの始まりからイノベーションをリードする存在として、最初の流動性アグリゲーション、オンチェーンエンドポイントを樹立しました。KyberDAOにおいても、DeFiでの最も成功したDAOの一つになりました。最近はオンチェーンでのプロマーケットメイカーのためのフレームワーク、 KyberPRO もローンチしました。DeFiマーケットのゲートウェイとして機能しています。Kyber 3.0 は重要なステップとなります。この大きな旅路を一緒に歩んでいきましょう。
制限を排除し、イノベーションを起こす新アーキテクチャ
既存のアーキテクチャでは、Kyber上の「リザーブ」と呼ばれる、トークン交換に応じる流動性供給者を効率的に探すことができました。これらのリザーブは単一の固定インターフェースを採用しており、ETHを基準通貨として使用したり、DDOS攻撃を防ぐために単一のアクセス許可モデルを採用したりといった一定のルールに従っていました。
DeFiのアーリーステージでは大変うまく機能しており、オンチェーンアグリゲーションによりベストレートを提供できていました。しかし時間の経過とともに制限が大きすぎ、アグリゲーターの勃興やパーミッションレスな流動性提供、ステーブルコイン同士のトレードなど、DeFiトレンドを逃す理由にもなりました。
これらの制限を排除し柔軟性を獲得し、将来的なDeFiトレンドを掴み取るため、Kyberを単一流動性プロトコルから、多様なDeFiユースケースに対応した、目的別流動性プロトコルのハブへとアップグレードします。
カイバーのこれまでのリザーブは改造され、Fed Price Reseerve (FPR)やBridge Rreserve はプロトコルがアップグレードされ、他の新プロトコルは時間をかけて開発が進められます。
流動性提供者とテイカーにとって、この変化は何を意味するか?
リザーブ群の単一の流動性プロトコルから流動性プロトコルのハブに移行することで、これまでの多くの制約を取り除き、DeFiで流動性提供者、テイカー、開発者にサービスを提供するためのキャパシティを拡大していきます。
DeFiには多くのユースケースと可能性があります。私たちは、単一の流動性プロトコルがすべての流動性プロバイダー、テイカー、その他の市場参加者のニーズに適合することはできないと考えています。このアーキテクチャの変更により、迅速に革新を行い、新しいプロトコルをKyberのネットワーク全体に統合して、さまざまなニーズに対応できるようになります。
1. 流動性提供に対する幅広い選択肢
私たちは、1つの固定されたインターフェイス/許可制モデルから、様々な目的に応じたプロトコルを構築することに移行します。これにより、流動性を提供したいと考えている流動性提供者の全く異なるニーズや目的に応えることができます。
以下に例を列挙します。
- プロのマーケットメイカーは、Kyberのプロ流動性プロトコルにより、効率的にオンチェーンマーケット・メイキングが可能です。コントラクトのデプロイやメンテナンスは不要です。
- 100以上のテイカーDappsを抱える、Kyberのネットワークにアクセスしたい外部の流動性ソースは、オンチェーンのBridge Protocolに組み込まれることができます。
- 全ての流動性提供者は、自動でパーミッションレスな新Kyber Dynamic MM に流動性提供することができます。
さらに、デリバティブを集約して取引するための新たなプロトコルを開発することも視野に入れています。ストップロス機能やトークンセールも実施できるアドバンスド・トレーディングプロトコルです。これらプロトコルには独自に、異なる流動性提供者がいます。
新プロトコルにより、異なるニーズを持つそれぞれの流動性提供者がKyberへ流動性提供することが可能に
2. 柔軟でガス効率の高いテイカー選択肢
このネットワークアップグレードでは、現在のアーキテクチャにおける重要な制限を改善します。制限とは、ネットワークレベルでの単一エンドポイント、固定された単一のリザーブインターフェイスが該当します。これらは複数の大きな制限を生み、前者はガス効率悪化を呼び、アグリゲーターがKyberを選びにくくなりました。後者はETHのみが基準通貨になっていることから、テイカーの選択肢を狭めていました。
Kyber 3.0の新しいアーキテクチャは、全体的なガスコストを削減するように設計されています。テイカー(例: Dapps)は選択したプロトコルから直接流動性を利用でき、不要なソースはフィルタリングできます。その結果、ガス消費が減り、オンチェーン(またはオフチェーン)流動性活用の柔軟性が生み出されます。
加えて、ETHが唯一の基準通貨ではなくなり、テイカーの柔軟性が向上しています。全てのプロトコルは複数の基準通貨を持つことができ、トークンとトークンの直接交換やステーブルコイン同士の交換 (例: DAI-USDC)でもよりよい流動性を提供します。
これらの変化はテイカーへの利便性と柔軟性をもたらします。特にアグリゲーターが効率的にKyber流動性を利用できるようになるでしょう。また、ネットワーク内のすべてのプロトコルから流動性を取得し、ベストレートを見つけるための単一エンドポイントも引き続き提供していきます。
3. 新流動性プロトコルが促すイノベーション
新アーキテクチャを通せば、KyberDAOとKyberチーム、そしてDeFiエコシステムはメイカー/テイカーが簡単に利用できるエコシステムを協力して構築できます。開発者が創造性を発揮できるような新プロトコルにより、Kyberは堅実な価値を創造できると信じています。開発者のプロダクト開発のため、Kyberを統合することがより容易になります。
全てのプロトコルは、流動性とテイカーのメリット、技術的革新、ネットワーク全体の価値を高めるために存在します
DeFi で最初の Dynamic Market Maker (DMM)
KyberはDeFiで最初のDynamic Market Maker (DMM)を導入します。ネットワークに加わる新流動性プロトコルであり、どんな人でもLP(流動性提供者)になれるし、トークンを発行したチームもこれを利用できます。Kyber DMMは、今日にAMM(Automated Market Maker)が抱える課題を解決します。その課題とは、資本非効率性とimpermanent loss(変動損失)です。
典型的なAMMや他の流動性プラットフォームのような静的な特徴とは異なり、Kyber DMMプロトコルはトークンペアと市況に反応し、流動性提供者には手数料を最適化し、テイカーにはベストレートを提供します。これは2つのシンプルで新しいメカニズムにより達成されます。トークンペアに沿った Programmable Pricing Curve と、市況に沿った Dynamic Fee です。
1. 資本効率性のためのProgrammable Pricing Curve
Uniswapに代表されるような現在主流のAMMモデルは、”one size fits all (一つで全てに対応するモデル)” アプローチをプラシシングカーブに採用しています。Uniswapモデルで最もよく利用されるカーブは、全ての価格変動に対応しようとします。
このプライシングカーブは便利であり、どんなサイズの取引にも対応できます。一方、スリッページを抑えるために多額の流動性を提供しているLP(流動性提供者)には大きな問題が生じます。もちろん、十分な流動性が無ければテイカーはスリッページに苦しみます。
例えばステーブルコインペア(例: USDC/USDT)はUniswap等の通常のAMMではうまく機能しません。プライシングカーブは固定されており、その仕組で全てのペアに対応しようとするからです。ステーブルコイン同士のスリッページも、トークン/ETHペアと同じ額のスリッページが出てしまいます。流動性提供者はこれを避けるため、多額の資本をプールに入れる必要があるため、非効率な資本分配となってしまいます(提供した資本に比べて手数料も少なくなる)。
Kyber DMMの Programmable Pricing Curveを利用すれば、流動性プール作成者はプライシングカーブをカスタマイズし、プール資本の増幅を事前に設定できます。
価格変動の小さいステーブルコインペア (USDC/USDT, ETH/sETH 等)は高い増幅率を設定でき、同じ流動性プールとトレードサイズならばスリッページは100倍改善できます。他のペア(WBTC/ETH等)では、資本効率が5–10倍改善します。LPは流動性提供サイズに比べて多くの手数料を得ることができます。
流動性提供者はどのプールに資本を投入するかを決定します。最終的には、高い資本効率性を達成するため、マーケットが異なるペアにベストなパラメータを決定するはずです。
2. ILの削減と利益増加のための Dynamic Fee
impermanent loss (IL)のリスクはAMMの大きな問題点です。一つのトークン価格が他と比較して大きく動くと、損失が発生します。ペア間の価格変動が激しい期間は、高い取引高も見込めます。
Kyber DMMはオンチェーン取引高を監視し、それに伴い手数料を変化させます。通常のマーケットでは、DMMは他のAMMと同じです。通常よりも取引が活発になれば、DMMは手数料を高めます。取引が不活発な時期は、手数料が下がります。これは、プロのマーケットメーカーがリターンを最大化するために行っている戦略と同様です。
取引が活発な時期に手数料を上げることで、DMMはLPのimpermanent loss を取り戻してILのインパクトを抑えます。逆に言えば、ボラティリティが低い時期には、DMMは取引を誘発するために手数料を下げます。
3. Permissionless, simple, user-driven
決まったシステムや外部オラクルに依存する複雑なメカニズムと異なり、Kyber DMMは、LPやテイカーの利益のために、鋭い市場観察をメカニズムに応用しています。
直感的でユーザーフレンドリーなUIにより、誰でもキー・パラメーターを決定し、様々なトークンペアを簡単に流動性提供できます。テイカー(Dappやエンドユーザー)はニーズに沿って流動性を利用できます。
KyberDAOやトークンチームを始めとしたDeFiエコシステム全体と協調し、Kyber DMMプロトコルのアダプションを進めるためのベストなインセンティブ・メカニズムを議論しています。Kyber DMMの高いアダプションはKyberDAO収益 (KNC投票者のリワード)を長期的に高めます。
Kyberの次世代AMMはDeFiへユニークで高い価値をもたらすと信じています。impermanent lossのインパクトを削減し、より高い資本効率を求め、トレードと流動性提供にもっとダイナミックで堅牢な解決方法を提供します。
KyberDAO と KNC マイグレーション
ネットワーク構造の変化や新プロトコル開発、そしてKyberの全体的成長を促すため、KyberチームはKyberDAOとKNCトークンの大幅アップグレードを提案します。
ステーク量や参加者数の指標から、KyberDAOはDeFiにおけるDAOとして成熟しつつあると言えます。KNCステークや投票サービスを提供するプラットフォームはたくさんあり、KNCデリゲートを可能にする多様なネットワークもあります。これらのチームは、提案に有意義なフィードバックを与えてくれます。
提案に至った3つの背景:
- KyberDAOのガバナンスパワーを増大させる
- KNCユーティリティを新設し、価値を高める
- KyberDAOが流動性の革新をリードする
1) KyberDAOのガバナンスパワーを増大させる
異なるニーズに対応する流動性プロトコルのガバナンスに対応することを考えると、KyberDAOガバナンスの重要性は高まっています。これらの新しいプロトコルの中には、KNCに追加のユースケースを提供するものもあります。トークンホルダーは、プロトコル手数料をはじめ、どの成長機会を追求し、流動性マイニングのための資金を提供していくのか、などを決定することができます。
コミュニティは、Kyberの長期的成長に最重要です。コミュニティが新たな成長と価値創造の機会やインセンティブの仕組みを決定する役割を担うことで、KyberDAOのガバナンスの権限と責任が大幅に拡大することを期待しています。
2) KNCユーティリティを新設し、価値を高める
これらの変更により、KyberDAO(KNC投票者)は、既存のプロトコルだけでなく、新DMMプロトコルをはじめ、Kyber上の全プロトコルから手数料を受け取ることになります。また、KyberDAOは、新しいプロトコルの採用を後押しするインセンティブで流動性提供者やユーザーに報酬を与えることに投票することもできます。また、複数のプロトコルから手数料を管理・徴収する機能をKNCに持たせるため、KNCは新しいトークンにアップグレードされることも不可欠です。
KNCを保有することは、新たな流動性プロトコルへのステークを明確に表されることになります。
3) イノベーションを加速させるKyberDAOと、新プロトコルへの資金供与
このモデルでは、KyberDAOは新プロトコルをどのようにサポートするかを決定し(流動性インセンティブ)、持続的な流動性インフラを構築する必要があります。アダプションや成長は全てKyberDAOにより促進されます。
この提案が、Kyber Networkの競争力と新たな成長性、長期的な持続性のためのカギとなるはずです。
Phase 1: Katana
KatanaはKyberの持つ潜在能力を引き出すための、素早さ、決断、鋭い集中を意味しています。
Katanaフェーズ(Q1–2)では、KyberDMMがローンチされ、KyberDAOとKNCのアップグレード提案が提出されます。その後のフェーズ2 (Kaizen)において、全てのKyber3.0アップグレードがQ3後半に完了します。
a) KNC マイグレーション提案
コミュニティはKyberの長期的成功のカギとなる存在です。Kyberにまつわるトピックの議論やフィードバックのため、公式Discordを補完するガバナンスフォーラムをdiscorseで作成します。KNCマイグレーションとアップグレード提案はフォーラムで議論する最初のトピックとなり、投票はKyberDAOで行われます。
b) Kyber DMM ライトペーパー, テストネット, 監査
Kyber DMMライトペーパーは2月にリリースされます。いかに機能して、他流動性プロトコルとどんな差別化を有しているのか、詳細が記載されます。3月末頃のメインネットローンチに先駆け、テストネットが動き出し、新アーキテクチャのためのセキュリティ監査が行われます。
c) KyberDAO と KNC アップグレード(pending proposal passing)
提案がKyberDAOで通れば、チームはKyberDAOとKNCアップグレードを行います。アーキテクチャを大きく変更し、既存リザーブを完成されたプロトコルへアップグレードします。様々なステークホルダーには、スムーズに移行できるように働きかけます。
DeFiに持続性ある流動性インフラを
Kyber3.0はKyberアーキテクチャにとって最も大きな変更であり、これがユーザー数、流動性、取引高などの拡大に向けての基盤になるでしょう。Kyberを流動性イノベーションを中心に据えてくれるはずです。
革新と成長のための新アーキテクチャでは、Kyberを目的別流動性プロトコルのハブへと変化させることが目的です。また、持続可能でスケーラブルな枠組みの下で、KNCのガバナンスの範囲と報酬の可能性を大幅に拡大します。
EthereumやDeFiにおけるより高速で安価な取引へのニーズが高まっていることから、スケーリングやクロスチェーンソリューション(例:L2)がトレンドとなっています。新アーキテクチャはこれらを容易にサポートできます。
この記事がKyber 3.0概要の理解に役立つことを祈っています。今後の多くの変更点についてコミュニティやDeFiエコシステムを啓蒙するための取り組みを強化していきます。パートナーの皆様、KNCの関係者の皆様には、Kyber Networkの次の進化に向けた重要な一歩を踏み出すために、ぜひご参加いただきたいと思います。
Kyber 3.0: プロトコル再構築, Dynamic MM, KNC マイグレーション was originally published in Kyber Network on Medium, where people are continuing the conversation by highlighting and responding to this story.